2019年10月21日月曜日

【2018年】管理の過去問の解説 平成30年12月実施 問11~15


一般計量士と環境計量士の共通科目である、計量管理概論(管理)の過去問の解説です。
平成30年(2018年)12月実施 問11~15


問11 「JIS Z 8103 計測用語」で定義された測定標準に関する次の記述の中から、誤っているものを一つ選べ。


  1. 測定標準とは、基準として用いるために、ある単位又はある量の値を定義、実現、保存又は再現することを意図した計器、実量器、標準物質又は測定系のことである。
     
  2. 測定標準は基準として用いるので、その値に再現性があり、安定なものであることが要求される。
     
  3. 測定標準の値の不確かさは、その測定標準で校正された測定器を用いた測定の不確かさの一成分となる。
     
  4. 測定標準を試験所内での測定の精密さの管理に用いる場合、その測定標準の値は国家標準にトレーサブルであることが必須である。
     
  5. 測定のトレーサビリティを確保するための測定標準として、認証標準物質を用いることができる。




正解は、4が誤り。
「JIS Z 8103 計測用語」、標準物質の定義の注記2より、
付与された量の値の有無に関係なく,標準物質は測定の精密さの管理(化学分野では“精度管理”という。)に使用できる。一方,校正又は測定の真度(番号517参照)の管理に用いることができるのは,付与された量の値をもつ標準物質だけである。 




問12 測定のトレーサビリティに関する次の記述の中から、誤っているものを一つ選べ。

  1. トレーサビリティが確保されていれば、測定結果が、通常は国家標準又は国際標準である決められた基準につながる経路が確立している。
     
  2. 国家標準へのトレーサビリティを確保した測定器を用いて、適切に管理した測定で得た測定結果は、国家標準にトレーサブルである。
     
  3. 測定器の校正を通じてトレーサビリティを確保することにより、測定結果の不確かさはゼロになる。
     
  4. 企業内の限られた範囲で実施される測定においては、トレーサビリティの確保を必要としない場合がある。
     
  5. 測定器の校正に使用する測定標準に検査成績書が発行されていることだけでは、トレーサビリティが確保されていることにはならない。



正解は、3が誤り。
トレーサビリティが確保された測定器による測定結果は、その測定器が校正されたときの不確かさに、実際に測定するときの不確かさ分が加算された不確かさが生じることになる。測定結果の不確かさがゼロになることはありえない。




問13 「JIS Z 9090 測定-校正方式通則」における校正方式に関する次の記述の中から、誤っているものを一つ選べ。


  1. 測定器の読みと測定標準の値との平均的なずれの修正を、一般に定点の校正という。
     
  2. 測定器の読みと測定標準の値との直線関係を表す感度係数の修正を、一般に傾斜の校正という。
     
  3. 基準点での測定標準の値及び測定器の読みを用いて定点の校正を行うことを、基準点校正という。
     
  4. 零点の読みを零と仮定して傾斜の校正を行うことを、零点比例式校正という。
     
  5. 基準点での測定標準の値及び測定器の読みを用いて定点の校正を行った後、傾斜の校正を行う校正を、1次式校正という。




正解は、5が誤り。5は基準点比例式校正に関する記述。

<校正の種類と関係式>
(a)点検だけの校正:
修正は行わず,読みをそのまま測定値とする。y=M

(b)零点校正:
零点の読み y0で,定点の校正を行う。y=y0+M

(c)基準点校正:
基準点 M0の読み y0で,定点の校正を行う。y=y0+  (M−M0)

(d)目盛間隔校正:
任意の点(その読みが y0である。)を零点として,傾斜の校正を行う。y=y0+βM

(e)零点比例式校正:
零点の読みを零と仮定して,傾斜の校正を行う。y=βM

(f)基準点比例式校正:
基準点 M0の読み y0で定点の校正を行った後,傾斜の校正を行う。y=y0+β (M−M0)

(g)  1次式校正:
読み y の平均値y及び標準の値 M の平均値Mを用いて,定点の校正及び傾斜の校正を同時に行う。y=y+β (M−M)



問14 「JIS Z 9090 測定-校正方式通則」に基づく、生産工程で使用する測定器の校正に関する次の記述の中から、誤っているものを一つ選べ。

  1. 校正では、製品などの実際の測定対象を標準として用いることがある。
     
  2. 校正に用いる標準の誤差は、測定値の誤差の大きさに影響する。
     
  3. 校正方式には、点検は行わず修正のみ行い、新しい校正式を求める方式がある。
     
  4. 校正を行っても、経時的変化によって生じた測定器のかたよりを小さくすることはできない。
     
  5. 校正方式や校正間隔は、校正によって得られる効果と、校正に要するコストや手間を総合的に判断し、決定するのがよい。




正解は、4が誤り。
「校正」は、測定器の現在の感度値を確認し、標準器を用いて正しい値に調整する作業。一般的に、計測器は、使用環境や取り扱い状況により、経時的に値が変化するため、定期的な「校正」が必要になる。




問15 測定のSN比に関する次の記述の中から、誤っているものを一つ選べ。ただし、以下で、信号とは測定対象量の大きさを表すものとする。

  1. 測定のSN比とは、信号が変化したときに、測定器の指示値が忠実に変化しているかどうかを表わす指標である。
     
  2. 測定のSN比を求める実験では、値のわかった信号の水準をいくつか変えながら、それぞれに対応する測定器の指示値を得る。
     
  3. 測定のSN比を求める実験では、誤差因子の選択にかかわらず、得られるSN比の値は同じ値になる。
     
  4. 測定のSN比は、対数をとってデシベル値に変換することで、近似的に要因効果についての加法性を持つことが期待される。
     
  5. デシベル値に変換する前の測定の SN 比の単位は、信号の単位の2乗の逆数である。




正解は、3が誤り。
測定のSN比を求める実験では誤差因子として何を取り上げるかが重要である。
誤差因子が異なると当然測定器の指示のばらつきも変わり、測定のSN比も変わってくる。したがって、その測定器が実際に使用する条件を考えて誤差因子を取り上げることが重要である。





計量管理概論(管理)の過去問
平成30年(2018年)12月実施

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